倉敷翠松高校

茶道教育

〜54年の伝統〜

Tea ceremony

茶道は⽇本の⾐⾷住と精神、すべてに関わる伝統文化です。

倉敷翠松高等学校
茶道科
茶道は、喉の渇きを癒すだけのものではありません。
稽古の一つ一つの段階を着実に進め、各々の過程において基本を大切に学ぶことから心が育まれ、良き人格を形成し、精神性を高めるという創造的な学びです。
また、日本の正装である和服、茶室という日本建築、和室での所作、掛け物、床の間の花(茶花)、茶碗や棗などをはじめとする工芸品、抹茶や和菓子・懐石料理などの和食、これら全てが「茶室」という空間に凝集されており、まさに日本を代表する伝統文化であると言えます。

昭和45年、当時の杉 愼吾校長は「茶道は、精神的な高い次元で物を観て、人と交わり、美しい生き方をする人間を作ることができる。」と確信し、全国で初めて茶道を正課として導入することを実現しました。やがて全校生徒が授業として学ぶ本校教育の根幹となり、翠松高校茶道教育は令和元年に50周年を迎えました。
情勢が目まぐるしく変動する社会において、日本が守り継承してきた伝統文化、季節の移ろいを感じる心、他者への感謝や思いやりの心、それらを自然に身に付けることのできる無二の学びです。現在、世界中で取り組まれているSDGsの精神にも通ずる高度な教育の一環として、今もなお、杉愼吾先生の志は絶えることなく引き継がれています。

和敬清寂の⼼

「あたりまえのこと」 を
「あたりまえにできる」 よう
常に心がけながら生きることの大切さを学ぶ

茶道教育が生徒にもたらすものを、一言で表現するならば「和敬清寂(四規)」の心です。

和……お互い同志が仲良くする。 和しあうこと。
敬……お互い同志が敬いあい、自らを慎むこと。
清……見た目だけでなく、心の清らかさを大切にすること。
寂……どんな時にも動じない心のこと。

『利休七則』の「茶は服のよきように点て、炭は湯の沸くように置き、花は野にあるように、夏は涼しく冬は暖かに、刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客に心せよ」と合わせて「四規七則」と称します。

これら 四規七則に、利休の茶道に対する思い、人として心得ておくべき大切なことが集約されています。一碗のお茶が取り持つ主客の交流の中から、社会生活のルール・マナーを身に付け、友人関係においても、真の友情は礼節を保つことから生まれることを知る。これらは誰もが大切だと知っており、わかりきったこと、あたりまえのことなのです。
茶道を通して、誰もが知っているが難しい「あたりまえのこと」を「あたりまえにできる」よう、常に心がけながら、生きることの大切さを学んでいます。

お茶の時間を通して
「和敬清寂」の心を学び自分を見つめ直す

普通科 進学コース3年
井上愛菜
祖母が茶道をしていたこともあり、一度だけお茶を点てたことがありましたが、本格的にお稽古をしたことはありませんでした。翠松高校に入学して茶道の授業が始まり、最初のうちは道具の使い方や所作の一つ一つが難しく、すぐには覚えることができませんでしたが、授業を重ねるごとにスムーズにお点前ができるようになりました。
普段はあまり和菓子を食べることはありませんが、茶会形式の授業を通して季節に合わせた様々なお菓子があるということを知って面白いと思いました。自分が点てたお茶がおいしくできた時はとても嬉しくなります。
茶室での作法やお茶とお菓子のいただき方を通して「和敬清寂」の心や相手を思い、もてなすことの大切さを学べていると思います。
週に一回、茶道の授業を受けることで自分を見つめ直すことができ、気持ちがスッキリするように感じます。

茶道カリキュラム

茶道は、全学年・全学科・全コースで週⼀単位履修科⽬です。
普通科商業科⽣活科学科
1〜2年
正課「茶道」として週⼀単位履修
3年
「総合的な探究の時間(茶道)として週⼀単位履修
看護科
高校課程
1〜3年 正課「茶道」として週⼀単位履修
専攻科課程
1〜2年 「⽣活美学 茶道」として履修

学べる内容・⾝につくこと

1年次

本校に「裏千家茶道」が正課として導⼊され、令和元年に50周年を迎えた経緯と、導⼊に尽⼒された学園⻑および第 15代家元・現⼤宗匠の⼼を知る。その上で、茶道の持つ精神性の⾼さ、⼈としての礼儀作法、本質的な在り⽅を学ぶ。また、点前の基本の所作と道具の扱い、割稽古から盆略点前を学ぶ。点前学習を通して、亭主(もてなす側)と客(もてなされる側)という関係性を理解し、茶室での所作、⼼得を習得する。

2年次

茶道の持つ⾼い精神性のすばらしさを認識し、⾼校⽣としてのみならず、⼈としての礼儀作法を⾝に付ける。班別少⼈数編成で、基本の盆略点前、薄茶点前を中⼼に授業を展開する。実技・学の授業内容や学園祭における茶会運営を通じて、⽇本⽂化「茶道」に対する知識・技術(技能)を主体的に学ぶ態度を⾝に付ける。

3年次

茶道の持つ高い精神性のすばらしさを再認識し、社会人として、 人としての礼儀作法を身に付ける。 風炉薄茶点前や立礼点前を繰り返し学習し習得することで、 自己を修練し相互尊重の心を学ぶ。お家元研修をはじめとして、忘庵学習、茶碗の絵付け学習・翠松茶会や茶事などの特別行事を通して 「茶道」 や 「日本文化」 の重要性を認識し 「和敬清寂」 を理解し実践する。

茶道行事

茶道家元研修

3年⽣の1学期に裏千家今⽇庵を訪問し研修を⾏っています。重要⽂化財である茶室の⾒学や、茶会への参加、また、⼤徳寺聚光院での千利休の墓参など、通常では経験できない特別な研修です。この研修を通して、茶道への興味と理解が⼀層深まることは⾔うまでもありません。

茶碗の絵付け

3年⽣になると、毎年京都から清⽔焼の陶芸家⾕⼝正典先⽣をお招きして、茶碗の絵付け実習が⾏われます。各⾃が思い思いのデザインを描いた茶碗は、⾕⼝先⽣の⼯房で焼かれ、それぞれの⼿元に戻ってきます。世界に⼀つだけの「オリジナルマイ茶碗」でいただくお茶の味は格別です。

裏千家ハワイセミナー

本校では、永年の茶道教育が評価され、毎年⽣徒代表1名が、裏千家主催ハワイセミナーに招待され、参加しています。千⽞室⼤宗匠をはじめとする多くの⽅々との出会いと、海外での茶道体験は、⽇本⽂化のすばらしさを再確認し、⼼を磨く最⾼のチャンスです。

茶事

本校での茶道教育3年間の締めくくりとして催される「茶事」。茶事とは、炭⼿前・懐⽯料理から始まる、最も正式な茶会のことです。この⽇は点前や⽔屋(裏⽅)も茶道科の先⽣⽅が務めます。倉敷翠松⾼校では茶事が済むと卒業の季節。⽣徒たちは、感謝の気持ちと相⼿を思いやる⼼を胸に巣⽴っていきます。